10年前、大阪で1歳の男の子と母親が殺害された事件で、死刑が一転、無罪判決です。死刑判決を受けた義理の父親に対する、やり直しの裁判で大阪地裁は無罪を言い渡しました。
逮捕から9年4か月、無罪判決が言い渡された後、森健充被告(54)は微動だにせず、前を見据えて裁判長の判決文読み上げに聞き入りました。
2002年4月、大阪市平野区のマンションの焼け跡から、森まゆみさん(当時28)と1歳の長男・瞳真ちゃんが殺されているのが見つかりました。
7か月後に逮捕されたのは、まゆみさんの義理の父で刑務官の森被告。一審で無期懲役、二審では死刑の判決を受けました。
犯行を直接裏づける証拠がないこの事件。現場マンションの踊り場で見つかったタバコの吸い殻から、森被告のDNA型が検出されたことが重要な状況証拠となっていました。
しかし、最高裁は事件当日よりかなり前に捨てられた可能性があるとして、大阪地裁に審理を差し戻しました。また、現場付近で見つかったほかの吸い殻について、警察が紛失していたことが発覚。検察側の立場は、一層厳しくなっていました。
注目された15日の判決。大阪地裁は「タバコは被害者のまゆみさんの携帯灰皿を経由して捨てられた可能性を否定できず、事もあろうに、証拠を捜査機関の不手際で紛失し、鑑定ができなくなった。被告が現場マンションに赴いたことを認定できない」として、森被告に無罪を言い渡しました。
「(森被告は)『必ずこの日が来ることを信じていた』と言っていました。客観的な証拠がどうとかではなく、思い込んで、それに基づき捜査が一直線になされた」(森被告の弁護人)
「こういう結果になって、言葉では言い表せないが、悔しいのひと言ですね」(遺族の会見)
判決を受け、大阪地検は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントしています。(15日17:47)
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