地球温暖化の原因とされる温室効果ガス。主要国は京都議定書で、この温室効果ガスの排出を大幅に削減するよう義務づけられています。しかし、25日に開かれた政府の審議会では、日本の目標達成は現状では実現困難であるとしました。こうした中、民間企業の間では、温室効果ガスを排出する権利を売り買いするビジネスが始まっています。
中国4大都市の1つ、重慶に近い炭坑。年間430万トンの石炭を産出し、中国の急激な経済成長を下支えしています。しかし、石炭を掘る際、土の中に含まれているメタンガスが大量に発生します。その量は二酸化炭素に換算すると、およそ140万トン分にもなります。
メタンガスの温室効果は二酸化炭素の21倍と非常に大きいため、この炭鉱では日本の大手商社と協力し、大気中に放出してきたメタンガスを発電用の燃料として利用する新しい事業を進めていますが、こうした取り組みは日本企業にとっても大きな意味を持っています。
京都議定書では、先進国が発展途上国に協力して温室効果ガスの排出量を減らすことができれば、途上国はその減った分を「排出権」として先進国側に売ることが認められています。一方、先進国側では排出権を購入することで、何とか削減目標を達成しようというのです。
取引を仲介するのは日本の大手商社です。しかし、排出権という目には見えない権利を売り買いするだけに、当初、疑心暗鬼だった中国企業の理解と信頼を得るまで、かなりの時間がかかりました。
「新しい計画で10万キロワット(発電する)」(通訳)
「へえ、10万キロワット!それも一緒にCDM(排出権)にしましょう」(三井物産環境事業室西川淳也マネージャー)
排出権取引にはもう1つ大きなハードルがあります。排出権取引を最終的に認めるのは国連です。しかし、その承認を得るためには国連が委託する第三者認証機関と綿密な打ち合わせが必要で、この大手商社でも電話やメールでひんぱんにやりとりを行いましたが、それに要した期間は7か月にも及びました。
「(認証期間に)現場訪問や、足りない情報を補足して説明することを、いかに丹念にやるかが一番苦労した」(三井物産西川淳也マネージャー)
「ここまで時間がかかったが、今回のミーティングでは手応えを感じた」(三井物産環境事業室稲室昌也チームリーダー)
こうした中、二酸化炭素の排出量が多い電力業界では、自ら排出権取引に乗り出しています。
「国内対策ではどうしても(電力業界の目標の)20%削減を達成できない。海外からクレジット(排出権)を購入している」(東京電力環境部平野学グループマネージャー)
東京電力では南米のチリなどで行った3件のプロジェクトで国連の承認を得ていて、合計300万トン余りの排出権を購入済み。さらに8件のプロジェクトの承認を申請しています。
しかし、こうした取り組みは大手企業の一部に限られているのが現状です。国としての排出削減策がいまだに定まらない中、排出権取引が定着するまでには、まだ時間がかかりそうです。(25日15:56)